13、熱に浮かされて 「―――で、何で早速こうなるかな? 俺は寝たいんですけど」 俺は宮村のベッドの上に寝転んでいた。寝るためにいるわけじゃないのがなんとなく悲しい。ちなみに自分で寝転んだわけじゃなく、押し倒されたと言った方が正しい。 見上げているのは天井ではなく、俺様モードに見事復活してしまった宮村の、ムカムカとしてくる笑みだ。 仰向けに倒された体の上にのしかかるのは、宮村のスリムで程よく筋肉のついた体。コンプレックスを刺激される要因になってはいるけど、今はそんな些細なことに構っていられなかった。 「思いが通じた夜に何もしないのは味気もそっけもなくて俺はつまらん」 「アンタのつまるつまらないの問題じゃない。俺はもう限界なんだ」 「禁欲しすぎてか?」 「この状態でどうしてそう考える事が出来るんだ。体力の限界だって言ってんの」 「じゃあ限界を超えればいいだけだ」 いかん、眉間に皺が、こめかみに痛みが……。色情魔のこの男に何を言っても99.9%無駄だとはわかっているけど、それでも0.1%に賭けた俺の希望はあっけなく崩れ去った。 「あまり気にするな。どうでもよくなってくる」 「よくなっちゃ困るんだよ! 俺あと数時間後にはガッコ…んんっ」 体の中で唯一元気に動き回る口を宮村は強引に塞いできた。元々疲れ切っていた俺に宮村を押し返すような力は残っておらず、もう「なるようになれ」状態だ。 それだけならまだいい。困るのは、キスだけでフワフワ〜って感じに気持ちよくなってしまうことだった。 「んぅ……っふ…んっ」 舌を突っ込むな。あちこち嘗め回すな。っていう二割くらいの抵抗はそろそろ息絶えそうになっていた。それだけ宮村の舌使いが巧みなのか、俺がただ感じやすいだけなのか。 どっちにしろ、後にも先にもヤったことがあるのは宮村だけで、比べることなんか出来ないんだけど。 俺が濃厚な口付けの方に意識を集中させている間に、宮村の空いている手が俺の着ているTシャツの裾を捲り上げ、胸の辺りを撫でる。 「んん……ふぅ…っぁ」 宮村の指先が時折乳首に触れると、むずがゆい感覚がゾワゾワと全身を駆け巡る。何故か喘ぎが唇の端から零れてきてしまう。 お、んなでも、ねぇのに……っ。 男が胸で感じるなんて、俺は聞いた事がない。聞く前に身を持って思い知らされていた俺にはあまり聞いても意味のないことだけど、簡単に認められるほど、俺は人間が出来ていない。 「んんんっ!……ふ、あぁッ」 「いい声で啼くよな、お前。声だけでも十分感じそうだ」 「ンなこと、言われてもっ…ひぅっ…ぁあ」 嬉しくねぇ……! いつもよりも随分と長かったキスから開放されて、やっと悪態が吐けると構えた俺も、耳元で囁かれながら爪でカリカリ乳首を引っ掻かれたら、何を言っているかもわからなかった。 宮村はそのまま耳を甘噛みしたり、耳の中に舌を差し込んだりしてきた。俺が息を吹きかけられただけでも感じるってことを知っていてわざとやるから、とことん性格が悪い。 「っから…耳は、やっ、ぁぁっ…や、ぁ」 耳の中で濡れた音がダイレクトに鼓膜を刺激する。すぐにでも塞ぎたいのに、既に舌が入り込んでいるから無理な話だった。 その間にも宮村の手悪さは更にレベルアップして、爪を立てるほかにも、抓ってみたり引っ張ったりやりたい放題だ。 これは俺の体なのに。 でもそうか、と火照り始める体の中に妙に冷めた自分が頷いていた。しょうがないじゃん、「好きだ」と言われても、玩具扱いは変わらないんだ。 俺は早くも息が上がりかけていた。心の中で痛烈に響いてくるその言葉が嫌で、それが本当でも確かめたくなってくる。 「な、俺っ…アンタにとって…俺は玩具?」 あれほど調子に乗って俺の体を触りまくっていた宮村の動きがストップした。考えているのか、それともそんなことを気にする俺が嫌になったのか。 どっちにしろ怖かった。 「何故そう思う。何か誰かに言われたのか」 「だって俺、ガキだし。俺の事が好きでも、どうせそんな風にしか見られてないのかなって思って……」 気持ちがあっても、性欲処理に都合のいい青臭いガキには変わりないのかもしれない。 熱くなってきた目で宮村を見ると、俺よりも傷ついた様子の宮村の顔が俺を悲愴な面持ちで見つめていた。 「そんなわけないだろう……? 俺は一度たりとも、理人を玩具だと思ったことはない。そんな失礼なことがどうして出来る。お前は心もあるし、愛した人間をそんな風に思う奴もいないと思うが? 少なくとも俺はそうだ」 気持ちを疑ったわけじゃないけど、宮村は俺の言葉に少なからず疑われたと思っているに違いなかった。口調だけははっきりしていて、それが俺を安心へと導いてくれた気がした。 「うん……ゴメン」 いつまでも、三笠が言っていたことを気にしていちゃいけない。宮村がそういうなら、それが真実なんだ。 自分に言いきかせて、今度は自分から宮村の唇を奪いに行った。それだけでもますます体温は上昇の一途を辿るし、下腹部が余計に熱を持って疼く。 早くどうにかして、とっとと寝たい。 けどもっと愛されたい。 俺の中で睡眠欲と性欲の壮絶な戦いが始まっていたが、勝負は見えていた。学校も大事だけど――宮村はもっと大事だ。 「理人が誘ったんだからな。どうなっても、俺は知らないぞ」 「わかってる」 宮村は起こしかけた俺の上体を再びベッドに押し付けて、俺の胸に顔をうずめた。そこばかり弄られてすっかり硬くなってしまった乳首に歯が当てられて、俺の体が反射的に跳ねた。 「ゃぁっ…そこば、か…いじ、るなぁッ」 「どうしてだ。気持ちいいんだろう? よくなければ、ここはこんなにも―――」 言いながら宮村は手を俺の下肢に伸ばし、既に半勃ちになっている俺のモノを撫でた。 「ぁぁッ!」 「硬くはならないはずだろう?」 くっ……このエロエロ変態スケベ男がっ! 今ので完璧に勃っちまっただろうが、ボケナス。ただでさえムラムラっと来るお年頃なのに、自分以外の人間にたとえ布越しでも触られれば余計そうなるに決まってんだろ! 気持ちよくても、男が胸と耳だけでこんなに感じるのは変だ。たとえ変じゃなくても恥ずかしい。 俺が睨んでいるのに気付いているくせに、宮村は俺への刺激をやめようとはしなかった。 寝間着代わりのハーフパンツの上から微妙なタッチで俺の息子を撫でて、空いている片方の手と口で乳首や体の色んなところを刺激してくる。宮村の手や唇や歯が触れた場所はどこもかしこも熱を持ち、まるで全身が性感帯のような感じだった。 「や、もっやめ……このままじゃっ…ぁ、ぁ」 俺は宮村の頭を力の限り押さえて抵抗しているけど、実は普段の半分の力も入っていない腕で宮村の行動を阻止しようなんてことは出来っこなかった。 俺の快感ゲージのイメージはっていうともう黄色とかオレンジとか突破しちゃって、赤一色。しかもゲージからはみ出しているような状態。 助けて、と言いたい所だけど、誰に言えば助けてくれるかこの状況。助けて=逃げる&射精、みたいな感じで。 誰もいねぇ…。あえて言うなら楽しそうに俺の体を弄くっている宮村だけ。それがなんだか本当に、悲しいよ…。 「早いな。このままイクか? 服を汚してもいいんなら、そうしてやるが」 「アンタ……わかってるくせに言うか」 「何のことだ?」 白々しく言うけど、口も目も明らかに笑っている。俺が服を汚すことに抵抗があるってわかってて、何もしないつもりなんだ。 俺は唇を噛んで、宮村が望んでいる言葉なんか絶対に言うもんかと頑なに口を閉じた。宮村は相変わらず楽しそうな表情で俺を見ている。 と、いきなりハーフパンツの中に手を突っ込んで直に触れてきた。 「すごいな、もうぐっしょりだ」 「ひぁッ…言う、な、バカ! んあぁっ」 そのまま握りこまれ、緩急をつけながら上下に擦られる。今までされたことなんか大した事ないってほどの快感が背筋を駆け上がり、四肢を突っぱねた。俺の気持ちなんかお構いナシに先走りの雫が溢れるのを、はっきりと感じて嫌になる。 さらにそれを絡めながらクチュクチュと卑猥な音をわざと立てて、俺を追い詰めていく。濡れたその音でも俺は感じてしまっていた。 どうしてこうも快感に従順な体なんだろうか……。 宮村に対して反撃の方法もまともに思いつかず、ギリッと歯を噛みしめた。悔しい。 「や、だ…っなせっ…ぁ、もっイク、から…やっ、ぁあ」 「別に我慢する必要なんてないだろう。一度イッちまえ」 「ぃ、あっ…あぁああっ…!」 先端の部分に親指の爪を立てられて痛いほどの感覚が全身を走りぬけた瞬間、俺はあっけなくイッてしまっていた。服も何もあったもんじゃない。飛び散った精液は、宮村の手や、俺の腹部に大量に付着していた。 肩で息をしている俺を前に、宮村は何の躊躇いもなくそれを口元に持っていき、舌でペロリと舐め取ってしまった。 「し、んじらんねぇ…。んでそんな汚ねぇもん舐めるんだよ!?」 しかも「舌でペロリ」の部分がすげぇエロく見えたしっ…! 何でそんなに美味しそうな顔して舐めるんだよ? 「理人は本当に、『やだ、離せ、するな』が多いな」 「恥ずかしいことを強制されて拒まない人間がいるかっての」 「いるだろ? ここに」 「俺はちゃんと拒否ったわ。聞く耳を持たないアンタがそもそもいけないんだろ!?」 「なら、それが無駄な足掻きだってわかっているはずだよな」 「わかっててもするんだよっ」 少し気だるい体を持ち上げて、しゃあしゃあと言いのける宮村の形のいい頭をグーで殴ってやる。……と思ったのに、腕掴まれて寸止め。 「殴らせろ」 「断る」 何で俺の「嫌だ」は通らないのに、こいつの「断る」はこうも簡単に通るのか。俺は誰かに訊きたくなった。 「少し大人しくしてろ」 「できるもんなら最初から……んむぅ」 いくら好きだって言っても、気持ちの準備もしないままに押し倒されていたら、しかも聞く耳を持ってない人間が相手なら暴れるしかないじゃんよ。 きっと、いや絶対に…こいつの頭の中にはそんなメンタルな考えは無いに決まっている。 これで気持ちが通じてなかったら、立派な強姦だろ。……少し前にされたけど。 またもやベッドに押し戻されてしまった俺の頭の中では「悪代官と町娘」のよいではないかよいではないか、あ〜れ〜、が流れ出した。 「何でこう、色気がないんだろうな。理人は」 「んなもん生まれたときから持ち合わせちゃいねぇよ」 持っていたとしたら即捨てたシロモノだ。 色気のない俺を弄くって何が楽しいんだか知らないけど、不敵で何を考えているかわからない妖艶な笑みを浮かべながら、宮村はまた俺の体に触れてきた。 今度は胸とか耳とかじゃなくて、ダイレクトに下の方。しかもイッたばかりでめちゃくちゃ敏感になっている。 「ああぁっ…ばっ…か、今さわっんなっ…! ひぁ…」 「気持ちいいんなら、別に問題はないだろう」 大アリじゃボケ。少なくとも俺には。俺が「問題がある」って言ってんだし、俺の体なんだから、俺の勝手にさせてくれよ。 俺の色気と一緒で、聞く耳を持っていない宮村は、前をゆるゆると刺激しながら、今はまだ頑なに閉ざしたままの後ろの穴に手を伸ばしてきた。 ある程度予想出来てはいた。一度はされたことだし。でも普通の反応は「拒絶」だろ。だから「普通」の反応をした。 「なっ、ちょ、どこさわ、ぁっ…て…っ!」 「一度しただろうが。それに、意外と感度も順応性もいいみたいだしな?」 「何がじゃボケ……つぅぅ…ぁ…合意、もなしにっ」 「俺に好きだと言った時点で合意の上だろう」 う……そ、そうかもしれないけど、何の用意もなしに(まぁさっき宮村が自分で舐めていた方の手だから、多少は濡れているけど)突っ込むなよ。 ただそういう行為には全く慣れていない俺のソコは、多少の無理でもすぐに悲鳴を上げた。爪が内壁に引っかかって、その上無駄な力も入っているせいで、痛みだけが感覚として伝わってきた。 「くっ……った、いたい痛いってば…ぅく…痛いって言ってんだから、抜けっ!」 俺が涙目で訴えると、宮村は軽く舌打ちをして、第一関節とちょっとくらい入り込んでいた指をズル…と抜いた。 「っ……!」 その途端、軽く痺れるような感覚が走り抜けた。思わず声を上げそうになって唇を噛む。そう簡単に宮村を煽っちゃいけない。 圧迫感がなくなってホッとしていた俺を、宮村はクルリと反転させて今度はうつ伏せの状態にされる。 「? いきなりなん……ぁっ…!?」 安心出来たのは本当にほんの束の間だった。今まで圧迫されて悲鳴を上げていた穴に、湿った何かがあてがわれ、しかもソコをほぐす様に動き回っている。 「て、めっ…なん…あぁぅ…っぁ、ぁ」 「仕方がないから、痛くならないように舐めてほぐしてやっているだけだ」 仕方なかったら潔く諦めろよ! 言いたいのにピチャピチャと音を立てて舐められている部分から、小さな、でも鋭い快感が体の奥を突いてくるせいで言葉にできない。 「ぁっ、はぁぁっ……やめ、ろ…よ」 「もう少し素直に感想が言えないのか」 「だれ、が……んぁあっ」 言うか、と思った矢先、宮村の舌がだんだんと柔らかくなってきていた穴に舌の先端を尖らせてぐっと挿しこんできた。今度は波でいれば津波並の衝撃が俺を悶えさせる。 さらに舌を動かしながら、ゆっくりと指を入れてくる。さっきよりも大分楽に俺は宮村の指を受け入れた。 俺に快感をもたらしながらも探るように動いていた指は、唐突にある一点を強く押してきた。 「ぁぁあっ……ぁ、はっ…ぅ」 一度経験しているはずなのに、その感覚だけは過剰に反応してしまった。 な、んだよ今の? しかも俺、どうして……。 「理人、もしかしてお前……」 「はぁ、…っ…うっさい…お前が、変なことすっから……!」 うつ伏せになったまま、腹部のところにあるシーツに染みが広がるのを素肌で感じた。さすがにここまでくると宮村のせいだけじゃないのかもしれない。 「早漏」って単語が俺の頭の中をグルグルと旋回し始めた。……すげぇ、恥ずかしい。 「……可愛いな」 「んだよ。笑いたいなら、笑えよこんちくしょーっ」 「誰が笑うか。俺でそんなに感じてくれて、嬉しいんだよ。……それだけ濡れて感じてるならもう大丈夫だな」 「何が……?」 本気で泣きそうになっていた俺を見て、フッと笑った宮村はその問いには答えなかった。代わりに今まで指と舌で散々蕩けさせられていた場所に、熱くて硬いものが押し当てられた。 「え、ちょっ…なに、…ぁぁあ、ぁっ!」 …否、答えはした。体で。 ググッ…と熱くて大きくて硬い宮村が、じわじわと俺の体の中に入ってくる。唾液のおかげで潤滑が良くなっていて、宮村は侵入をやめることはなかったし、不思議と俺の体も拒もうという力はほとんど働かなかった。 「っ……ホラ、全部入ったぞ」 「ぅ、あ…何、嘘……」 「嘘なんてついてどうするんだ」 仰るとおり、なのはわかったけど、何で俺の手をわざわざ持っていくの!? 触れたソコは思わず手を引っ込めてしまうくらい熱くて、しかもしっかりがっちり繋がっていた。 「ほらな」 「や、ぁっ、ぬ…けよ…っ」 俺は首だけ振り向いたままのキツイ態勢で宮村に目で、言葉で懇願した。すると宮村はずっ…と身を引いた。まだ少しだけきつかったらしくて、引き攣れる内壁は俺に痛みと快感を同時に与えた。 俺はそのまま全部抜いてくれるのかと思い緊張を少しだけ緩めた。それが悪かったらしい。 宮村はまた俺の中に自身を勢いよく押し込んで、俺の体を突き上げた。 「ふぁあっ…ぁ!!」 雷を落とされたみたいに体がビリビリとくる強い感覚が頭の天辺まで走り抜けた。大きく背中を仰け反らせた俺の反応がよっぽど気に入ったのか、宮村はお構いナシに俺の体を穿つ。 「あ、ぁっ、ぁあっ…っぁぁぅ」 脳みそまで痺れてきて、だんだん意識が遠のいていきそうになる。俺は必死で気を持って、ベッドのシーツに爪を立てた。結局、最後は宮村の希望通り、ってわけだ。せめてガンガン衝いてくるこいつに、血が出るまで爪を立ててやりたい気分だ。 「ひぁ、ぁ…あっ…あつ…ぃ、も、放せ…はぁあっ」 「放すも何も、食いついているのは、理人、お前だ」 「や、ぁっ…ちがっ…ぜったぃぁっぁ」 口では否定したけど、少しだけ気付いていた。繰り返される抽挿に慣れてきた穴が、今度はもっと貪欲に快感を求めて蠢いている。 「あッ、アンタの…んんっ、せいっだ」 本当は、こんな体じゃなかったのに。こんな、ケツの穴で感じるような人間じゃないし、ましてや男とセックスして悦ぶような奴じゃなかったのに。 全部、アンタが悪いんだ。 「あぁ、俺のせいにすればいい」 含み笑いを浮べながら言っているのが、見なくてもわかる。それはそれは嬉しそうな声だった。 そんな声にさえ、安心してしまう自分はきっと重症なのかもしれない。 「俺が、一生涯、責任とってやる」 「そ、なこと言って…なぁっ、あ」 呂律もまともに回らなくなってきた。視界がガクガクと揺れて目が回りそうなくらい。けどそれ以上に気持ちよすぎておかしくなりそうだった。 「も、やだ…イ、キたい……」 どうしても、あと一歩のところで快楽の波が引いていくみたいに、俺はイケなかった。別に戒められているわけでもないのに。 そんなところの加減まで知っているのかと思うと、つくづく恐ろしい人間だよな。 「名前……」 腰の動きを完全にストップさせて、宮村が呟いた。 「へ…ぁ…っ?」 「さっきから、アンタ、お前、てめぇしか聞いていない。……言ったら、イカせてやる」 何の意味もなく、ただ呼べと。 本当に…どこまでこの男はゴーイング・マイ・ウェイなんだ。 こんなときに、羞恥心とか何もかも全て捨てられたらって思う。いっそ何を言っているかわからないくらい、めちゃくちゃにされていたらよかった。 宮村にはきっとこんな気持ちは理解できないと思う。名前を呼ぶって、ただなんとなく呼ぶっていうのは……結構恥ずかしい。しかもこんなときに。 でも俺は、宮村が一度決めたことは滅多なことでは覆さないっていう奴なんだってわかっている。 早く、早く、熱の呪縛から解かれたくて。 宮村……ジン。 ジン。 「ジ、ン……ジン…はや、く…イカせて…っ」 「上出来だ」 そう思ったら、口が勝手に動いていた。宮村からやっと了承がもらえたんだと思うと、どことなく気分がいい。いつも一方的に丸め込まれていたせいなのか。 ガクン、と視界に在るもの全てが大きく揺れた。 「ぁぁあっ」 さっきよりも性急で乱暴なほどの激しい抽挿が俺のゴチャゴチャとした思考を振り払う。後に残ったのはただひたすらに互いを求める感情だけ。 逐一耳に響く腰を打ち付けられた時の音と、体の内部と外から聞こえる濡れそぼった音が精神的に俺を追い詰めていく。 「はぁあっ…ぁ、あぅ…あ…っ」 体がまるでアイスクリームみたいに蕩けていくようだった。熱くて気持ちよすぎて、本当に狂うってくらい強い快感だった。多分、こんなに気持ちいいと感じたのはこれが初めてだ。 「ぁああっ……!」 俺はまたイッた。でも宮村は腰の動きを止めることはしなかった。シーツを掴む腕にも力が入らなくて、ガクガクと震えた。 「やっ、ま…って…や、あっ…俺、死ぬ……」 「殺さねぇから、安心しろ」 そういう意味で言ったんじゃないってば! もう半分意識が飛びかけている状態で宮村を受け入れ続けるのにも限界が来ていた。怖いくらいの快感がひっきりなしに俺を襲い続けて、本当に死ぬんじゃないかって感じがした。 「ぁあ……やぅあ、あ……も、マジでっダメ、だ…て…あっ」 「ああ、そろそろ俺も限界だ…っ」 宮村がその言葉を切羽詰った声で俺に囁いた瞬間、最奧を強く穿たれて、もう我慢が出来るはずもなく……。 「っ――あぁあっ……! ぅ、ぁ…」 「――――っ!」 俺が白濁とした飛沫を放ったと同時に、体の奥に熱いものが注がれるのを感じた。 「理人……こっち向け」 「な、に……んぅ…っ」 繋がったまま虚ろに背後を振り返ると、深く口付けられて、甘い痺れが舌から生まれる。 後のことなんて、もうほとんど気にしていなかった。ただもっと宮村を感じていたい。 ありえない事だけど、俺はふとそんなことを思っていた。 *ご意見・ご感想など* ≪BACK NEXT≫ |